Omega C.「SEMI MEMORY」

首都圏と地方都市、2つの街が1つの空間に

東京を拠点にメディアアート作品を制作しているOmega Centauri(オメガ・センタウリ)が、吉原商店街周辺の建物をモチーフにした体験型作品「SEMI MEMORY」を制作しました。東京圏と富士市内に実在する建物の3Dデータを融合させ、夢のような不思議な空間をスマートフォンで体験できる本作品は、ファッション/カルチャー/アート分野のXRコンテンツアワード「THE NEWVIEW AWARDS 2022」でグランプリ、ULTRA MEDIA Prize、ULTRA CULTURE Prizeの三冠受賞を果たしました。

今回は特別に、富士・吉原商店街での滞在体験などについてメールインタビューに回答いただきました。

SEMI MEMORYについて

「全ての記憶は半分(=semi)真実である」というアイデアに基づいた作品。扱われているのは、静岡、神奈川、東京で収集した、大正〜昭和時代の徐々に忘れ去られつつある空間や建築。中には取り壊されずに空き家と化したものもあります。これらの3Dスキャンデータ=「現実の切り取り」を融合させ、始まりも終わりもない「郷愁のテーマパーク」を作り出しています。この中を歩きまわり、蝉や雨などさまざまなアイテムと対話してみましょう。

私たちの記憶は、正しく思えるようで滅多に正確ではない。常に自身の解釈が混ざり、他の記憶に上塗りされ、全体に対するわずかな部分が保存されているにすぎない。「SEMI MEMORY」に存在する空間要素のデータは不完全でテクスチャーもまばら。そこにさまざまな体験が仕掛けられています。中でもジージーと鳴く日本の蝉(semi)は、毎年夏になると日本の音環境を支配する存在。彼らは私たちの記憶に入り込み存在感を発揮して、多くの人にとって「夏の記憶」の代名詞となります。(Omega Centauri)

 

【「SEMI MEMORY」体験の仕方】
1)App Store または Google Play で「STYLY」アプリをスマートフォンにダウンロード
2)検索ボタンから「SEMI MEMORY」を検索
3)VRモード(スマートフォンの画面内でスワイプ操作など行い体験)またはARモード(スマートフォンを目の前の空間にかざしたり移動しながら体験)でお楽しみください
4)パソコン/スマートフォンのブラウザでも下記から体験いただけます


開催概要

2022年9月下旬滞在(1泊2日)
THE NEWVIEW AWARDS 2022」応募作品(グランプリ、ULTRA MEDIA Prize、ULTRA CULTURE Prize受賞)


Omega Centauri プロフィール

建築家、CG/XRクリエイター。2016年に東京に引っ越し、建築家として働きながらバーチャルアートを作っている。
Instagram @omega.c では誰でも携帯で使えるインタラクティブなインスタグラムのエフェクトを制作。主な作品に「あいだのお湯」(道後オンセナート2022展示作品)ミナトノアート2022のARエフェクト作品など。
https://www.centauri-omega.com/


インタビュー:富士での滞在体験について

SEMI MEMORYの制作を始めたきっかけは?

ファッション/カルチャー/アート分野のXR(VR/AR/MR)コンテンツアワード「THE NEWVIEW AWARDS 2022」の募集情報で、テーマの「Melting Realities(融合する、溶けあう現実)」を目にしたことがきっかけでした。「(仮想)現実」はデジタルアートの分野ではよく扱われるテーマですが、実際の「リアルな現実」を捉える作品はあまりない。そして個人的に「記憶のあいまいさ」もいつか作品にしたいと思ってました。それをうまく表現するには、現実の空間やモノを3Dデータとして取り込める3Dスキャナーを使った何かがしたい、と思いました。

富士市、吉原商店街に実際に来てみて、どんなことを感じましたか?

高度経済成長やバブル期に栄え、その時期を境に時が止まったような場所が日本にはいくつかあると思うのですが、富士もそのひとつという印象を受けました。昭和時代を彷彿とさせる建物が多く、「ヒューマンスケール(等身大、人間的)」な商店街もある富士の雰囲気をとても楽しむことができました。たとえば地元の人が家の前の通りを生活感が滲み出すように整美していたり、シンプルながらときどき遊び心がある意匠も見られるのが印象的でした。

ここではシャッターが降りた空きテナントもあるけど、今っぽいお店やレノベーションの動きもその中にあって、東京のように新しい高層ビルがたくさん建っている過密地帯に時々古い建物がなんとか生き残ってるような場所と逆転してると思いました。

SEMI MEMORYには東京と富士(主に吉原商店街)の建物が融合した空間ができていますが、どう繋げようと考えましたか?

かなり良いかたちでそれぞれの場所の建物が繋がりました。エジプトのポスターが貼ってある東京の個人宅と、商品のポスターを貼っている吉原の時計店がシンクロして見えました。家や店舗の「おもて、路上」に向けて個人の生活や趣味にまつわるものを飾ったり置いたりする文化は日本独特のものに感じるのですが、それにも大きく関係があると思いました。

ほかに滞在の経験がSEMI MEMORYに活きたエピソードはありますか?

富士に来た日は夕方から雨が激しく降っていたので、数時間3Dスキャンをしに歩きまわったあとにお寺の東屋で雨宿りをしてました。雨が屋根の天井で反響していて、それがすごく良かったので録音して「SEMI MEMORY」の雨のシーンの効果音にしました。

 
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